配偶者に関する諸問題
について

平成28年10月31日

最近の新聞等の報道によれば、相続関係等の民法改正に関する法制審議会(法務大臣の諮問機関)相続部会の中間試案で、配偶者の居住権を保護するための方策が公表され、また、平成29年度税制改正案として配偶者控除の見直しが検討されています。

概要を確認しておきたいと思います。

居住用不動産の相続においては、遺産分割協議により共同相続人間で共有となる場合がありますが、その際、配偶者の居住権についてトラブルになることがあります。

その残された配偶者の生活への配慮の観点から、相続に関する規律を見直す必要があるとして、法相の諮問を受けた相続部会で見直しの試案が公表されたものです。

○配偶者の居住権を保護するための方策

1.短期居住権の新設です。

これは、配偶者が、相続開始の時に遺産である建物に居住していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、無償でその居住建物を使用できるようにするものです。

2.長期居住権の新設です。

これは、配偶者が、居住建物を対象として、終身または一定期間、配偶者にその使用を認めることを内容とする法定の権利を創設し、遺産分割等における選択肢の一つとして、配偶者に長期居住権を取得させることができるようにするものです。

○遺産分割に関する見直し

現行の法定相続分の見直しが行われますが、2つの案が出ています。

1.甲案 被相続人の財産が婚姻後に一定の割合以上増加した場合に、配偶者の申立てにより、その割合に応じて配偶者の具体的相続分を増やすという考え方。

2.乙案 婚姻成立後、一定期間(例えば20,30年)が経過した場合に、民法900条(法定相続分)の規定にかかわらず、一定の要件(例えば当該夫婦が協議により法定相続分を引き上げる旨の届出)のもとで、または当然に、法定相続分を増やすことを認めるという考え方です。

なお、現行の法定相続分は次のとおりです。

民法900(抜粋)」

 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分および配偶者の相続分は、各2分の1とする。

二 配偶者と直系尊属の相続分(略)

三 配偶者と兄弟姉妹の相続分(略)

四 子、直系尊属または兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

(注)平成2594日、「嫡出子と非嫡出子(婚外子)の相続分を区別する規定は違憲(平成137月当時)」とする最高裁の決定を受け、旧第四号の、「嫡出でない子は嫡出子の2分の1とする」部分を削除、95日以後の相続から適用されています。平成2511月施行。 

  試案では、ほかに、遺言制度や遺留分制度の見直しが行われています。(別稿)

○税制上の配偶者控除見直しの問題

 所得税の配偶者控除に関しては、政府・与党税制調査会の平成29年度税制改正において一定の所得以下の人に適用される「夫婦控除」に衣替えが検討されていましたが、これは見送られ、現行制度を存続し、控除対象額の見直しが行われています。

 103万円の壁です。配偶者控除を受けるためにこの壁を超えないように収入を抑える人が多いため、就労拡大を図る政策上、これを130170万円程度に引き上げる案が検討されています。ただし、課税される収入最低限度額は103万円に据え置かれるため、この金額を超えると,所得控除額が少ない場合は課税対象となる可能性があります。

 今後の議論に注目です。 

(参考文献)

1.民法(相続関係)等の改正に関する中間試案  法務省

http://www.moj.go.jp/content/001201997.pdf

2.民法(相続関係)等の改正に関する中間試案〈概要〉 法務省民事局平成287

http://www.moj.go.jp/content/001198630.pdf

3. NHK  NEWS WEB 税制調査会の平成29年度是正改正 配偶者控除

  http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2016_0920.html

  http://www3.nhk.or.jp/news/zeiseikaiseitaikou/index.html