暮らしの税制改正案について

  <big></big> 平成29年度税制改正案は、2月27日衆議院本会議で可決され、参議院に送られましたので、今年度中の成立が確実となりました。
そこで、この改正案について、私たちの暮らしにかかわる主な項目について確認したいと思います。

1、配偶者控除・配偶者特別控除の見直し


  所得税の配偶者控除に関しては、納税者本人の配偶者控除を受けるために、パート収入を103万円までとする就労時間抑制 (いわゆる103万円の壁)の問題がありますが、現行でも、140万円までは収入を増やしても、それなりに上限38万円から下限 3万円の配偶者特別控除の適用があり、世帯収入の手取りベースでは逆転しない仕組みになっています。それでも収入を抑える傾向が生じる要因として、103万円が企業の配偶者手当の支給基準として援用されていることや103万円の壁が心理的な壁として作用していることなどが指摘されています。
  このような課題に対応するため、今般見直しが行われ、配偶者の給与収入で150万円までは、所得税で上限38万円(住民税33万円)の配偶者特別控除が受けられるようになります。
納税者本人の合計所得金額は、従来同様1千万円以下の人で、配偶者の給与所得等の「合計所得金額」の区分に応じて 控除額が設定されます。
  詳細は【図表1】、【図表2】を参照ください。恩恵にあずかれない人もありますが、ご夫婦の所得をチェックして配偶者の最も有利な働き方を見直しすることも大切です。
  【図表1】 配偶者控除
納税者本人の
合計所得金額区
配偶者控除額( )内住民税
控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38(33)万円 48(38)万円
950万円以下 26(22)万円 30(26)万円
1,000万円以下 13(11)万円 16(13)万円
1,000万円超
<備考>
1.合計所得金額は、給与所得(収入-給与所得控除額)、 雑所得(年金収入-公的年金等控除額)、その他の所得
(収入-必要経費)など の合計額です。
2.老人控除対象者は、前年末で満70歳(年齢計算に関する法律、民法143条により計算)以上の人です。
3.配偶者控除の対象は合計所得金額38万円(給与収入103万円)以下の人です。
4. 納税者本人の合計所得金額が、1,000万円(給与収入1220万円)を超える場合は配偶者控除の適用がなくなります。
5.所得税は平成30年分から、住民税は平成31年分から適用されます。

【図表2】 配偶者特別控除
配偶者の合計所得金額区分 納税者本人の合計所得金額
900万円 以下 950万円 以下 1,000万円以下
38万円超85万円以下 38(33)万円 26(22)万円 13(11)万円
90万円以下 36(33)万円 24(22)万円 12(11)万円
95万円以下 31(31)万円 21(21)万円 11(11)万円
100万円以下 26(26)万円 18(18)万円 9(9)万円
105万円以下 21(21)万円 14(14)万円 7(7)万円
110万円以下 16 (16)万円 11(11)万円 6(6)万円
115万円以下 11(11)万円 8(8)万円 4(4)万円
120万円以下 6(6)万円 4(4)万円 2(2)万円
123万円以下 3(3)万円 2(2)万円 1(1)万円
123万円超 0 0 0
(注)
1、配偶者の給与収入が202万円の場合、給与所得控除78.6万円控除後の給与所得は、123.4万円になり、配偶者特別控除 は0円に、65歳以上で年金収入が200万円の場合は、公的年金等控除120万円を控除後の雑所得は80万円になり、上表の 最高控除額(38万円、26万円、13万円)の適用となります。

2、配偶者の給与等の合計所得金額区分が細分化され、従前の38万円(給与収入103万円)超76万円(給与収入141万円 未満の区分から、38万円超123万円(給与収入202万円未満程度)以下に引き上げられ、収入ベースで188万円(合計所 金額123万円)程度までは配偶者特別控除の適用が可能になります。

2、積立NISAの創設

  現行の少額投資非課税制度(NISA)である年間120万円まで5年間適用制度との選択になりますが、年間40万円 を限度に 20年間(平成30年~49年)積立てできる口座を開設できるようになります。積立投資対象は一定 の公募株式投資信託ですが、20年間で最大800万円まで積立分の配当と譲渡益が非課税になりますので、一定額積立目的、分散投資として検討できます。
 

3、相続税・贈与税の納税義務の見直し


  現在、国外所有財産については、被相続人等の住所が5年を超えて国内にない場合で、相続人等も5年を超えて国外にいる場合は課税対象外とされていますが、改正で国内住所の要件が10年超になります。
 
<国外財産が相続税の対象外となる要件>
①国内に住所を有しない人で日本国籍を有する相続人等が、被相続人等から海外発行の株式や債券、海外不動産などの国外財産を相続する場合の納税義務は、被相続人等、相続人等とも相続開始前10年以内に国内に住所を有しないこととされます。
②入管法(出入国管理及び難民認定法)別表第1の高度専門家等としての在留資格をもって一時的に滞在(10年以下の滞在)する人の相続または遺贈に係る相続等  以上は、平成29年4月以後の相続・贈与に係る相続税、贈与税に適用されます。

4、居住用超高層建築物に係る課税見直し

  高さ60mを超える居住用マンションの分譲価額が上層階ほど高い状況にあって、固定資産税が同一であることの不公平感を解消するため、階層別専有床面積補正率により補正することとされます。具体的には1階を100として、1階増すごとに10を39で除した割合を加算した数値となります。40階で10増え110になります。
  これより上層階も同じ割合で加算されますが、マンション全体の固定資産税評価額が増えるわけではないので、上層階が若干高く、下層階が若干安くなる感じです。 建物に居住用以外の専有部分がある場合は、居住用部分と非居住用部分に床面積であん分し居住用部分に適用されます。
  この改正は、都市計画税、不動産取得税も同様に扱われ、平成30年度から新たに課税される超高層建築物に適用されます。

5、酒税改革

  改正の実施時期が3段階に分かれ、第1段階は、平成32年10月、第2段階は、平成35年10月、第3段階は、平成38年10月改正で10年がかりの改正です。  ビールの定義、発泡酒の範囲、果実酒の範囲が見直され、最終的には、500ml換算で缶ビール32円減税、第3のビール37円贈税、日本酒10円減税、ワイン10円増税です。 晩酌の見直しも必要になるでしょう。

(参考文献)
1.平成29年度税制改正大綱(平成28年12月22日閣議決定)
2.出入国管理及び難民認定法
3.年齢計算に関する法律(民法143条)