2018年2月28日
先月22日、通常国会が開会されました。今国会では、遺産相続における配偶者の優遇制度
や税制改正などが審議されますが、本号では、暮らしの税制に絞って取り上げて見たいと思
います。
税制は、前年以前の改正分で本年度から実施のもの、本年度改正で、翌年以降実施のもの
などがありますので留意が必要です。
1.本年度の確定申告留意事項
@医療費控除制度
医療費控除の特例として、平成29年分から、セルフメディケーション税制が適用されます。
これは、健保や国保が行う人間ドッグ、各種検診、予防接種、事業主検診、メタボ検診、
市町村が行うがん検診など健康の保持増進および疾病の予防に取り組んでいる人が、ドラッ
グストアで購入したスイッチOTC医薬品(医療用から転用された医薬品)の購入費について、
申告により医療費控除ができる制度です。
適用できるものは、医薬品購入時の領収書等にセルフメディケーション税制の対象商品で
ある旨の表示(レシートに★マーク)があり、医薬品の箱に識別マーク(税・控除対象)の表示
があります。
例えば、ガスター10、サロンパスEX、ダマリンS、ボルタレンACなどの薬品を見てみますと
識別マークが確認できます。
A医療費控除額
購入費合計額(保険で補てんされる部分を除く)から、12,000円を控除した金額(上限額
88,000円)です。10万円の医薬品購入で上限額適用となります。
ただし、この特例を受ける場合は、現行の医療費控除の適用が受けられません。
<現行の医療費控除制度>
平成29年分から、申告書提出の際、領収書の添付が不要となり、「医療費控除の明細書」
を添付すればよいことになりました。ただし、領収書は5年間自宅保存です。
控除額は、10万円または合計所得金額の5%との低い方の金額を超える部分(最高200万円)
です。
合計所得金額が200万円超で、医療費が188,000円超なら現行の医療費控除を適用した方が
有利になります。
(例)190,000−100,000=90,000円 >88,000円
B申告手続き
>
確定申告書に、「セルフメディケーション税制の明細書」(所定の様式)と取り組みを明らかに
する保険者、事業者、医師名などの記載のある書類(領収書または結果通知表)の添付また
は提示が必要です。
2.個人型確定拠出年金(iDeCo)
平成29年から加入範囲が広がっており、現役世代の加入者は、掛金を「小規模企業共済等
掛金控除」として所得控除が受けられます。
@企業型確定拠出年金加入者(企業年金なし):24万円
A同(企業年金あり):44千円
B専業主婦(第3号被保険者):276千円
仮に、妻のパート収入が140万円程度で、前記の上限額の276千円の所得控除を受けた場
合は、4万円程度(所得税5%、住民税10%)の節税となり、納税者本人(夫)の合計所得金
額が1,000万円以下なら、配偶者特別控除38万円の適用もあります。
iDeCo(イデコ)の節税メリットはあります。
3.積立NISAが始まりました
平成30 年1月から積立NISA(少額投資非課税制度)が利用できるようになりました。
従来のNISA(非課税枠120万円、5年間、上場株式・公募株式投資信託・REITなどに投
資)も利用できますが、同一年内の併用ができませんので、両方利用したいときは、1年ご
とに交互に選択することになります。
口座開設は、今年から20年間、毎年の投資額上限40万円で最大800万円まで「公募等株
式投資信託」に定期的に投資できます。
4.平成30年度税制改正案(抜粋)
「1億総活躍社会」の実現に向けた働き方改革の後押しとして個人所得課税の見直しが行わ
れます。
@個人所得課税(2年後以降適用)
給与所得控除、公的年金等控除が10万円引き下げられますが、基礎控除が同額引き上
げられ振り替わりとなります。
給与所得控除額は最低55万円、公的年金等控除額は65歳以上最低110万円(65歳未満
は60万円)になり、基礎控除は48万円(住民税は43万円)になります。
給与所得控除の上限額も収入850万円(現行1,000万円)超の場合195万円(現行220万円
に引き下げられます。
公的年金等も収入金額が1,000万円超は、控除額が195.5万円(上限額)に設定されます。
<所得金額調整控除の新設>
給与等の収入が850万円超の居住者で、特別障害者の扶養親族等を有する場合は、収入
金額(上限1,000万円)から850万円を控除した金額の10%を給与所得から控除できる制度
が新設されます。
A配偶者・扶養親族控除の所得要件引上げ(2年後以降適用)
現行の38万円が48万円(住民税は43万円)に引き上げられます。
配偶者特別控除は、現行合計所得金額が38万円超から123万円以下であれば、配偶者の
所得額に応じた金額が配偶者特別控除額とされますが、所得要件が48万円超から133 万円
以下に引き上げられます。
B青色申告特別控除(2年後以降適用)
青色申告者は、正規の簿記の原則によって記録している場合、現行最大65万円控除されま
すが、55万円に引き下げられます。
ただし、電子申告(e-tax)を利用した場合は10万円加算されます。
C登録免許税の免税措置
相続により土地の所有権を取得した人が、その土地の所有権の移転登記を受けないで死亡
し、その人の相続人等が平成30年4月以降3年間の間に、その死亡した人の名義とするために
移転登記を行う場合、登録免許税が免除されます。
所有者不明の市街化区域以外の土地で行政目的のため相続登記が必要とされる土地につい
ても、土地の価額が10万円以下のものは登録免許税が免除されます。
通常、相続の場合の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。
Dたばこ税の見直し
紙巻きたばこは、本年10月から4年かけて1本あたり3円増税、1箱当たり60円増税になり
ます。
加熱式たばこは、5年で紙巻きたばこ小売料金の7〜9割になるよう段階的に引き上げとなります。
概要ご案内まで。
(参考文献)
1.平成30年度税制改正大綱
2.国税庁ホームページ
3.厚生労働省ホームページ セルフメディケーション税制
