いよいよ消費税が10%になりそうです。予定では2019年10月からですが、2%の引上げとは言えやはり家計負担は重くなります。
消費税は、国や地方の財源として基幹部分を占める大事な税金であり、社会保障充実(消費税法第1条)のためにも必要ですから、消費者が負担することはやむを得ないところですが、大人から子供まで、所得の有無にかかわらずみんな一律税率という問題点があります。
物品の消費額に応じた税負担であり一見公平に見えますが、所得に応じた累進課税と違って、みんな一律課税のため、低所得者ほど実質の負担感が大きくなる逆進性があります。
この機会に概要を再確認し、節税に努めたいと思います。
1.消費税の必要性
@公平性の確保のため
社会共通の便益を賄うための基礎的な負担は、国民ができる限り幅広く公平に分かち合うことが望ましいという考えから、消費を基準として広く薄く負担を求めるという間接税としての必要性が生じていたこと。
A個別間接税の問題解決のため
消費税導入前は、物品税として個別間接税の制度がありましたが、物品により課税されたり、されなかったりと不均衡問題があったこと、主要国はすべて消費課税制度で国際摩擦の一因にもなり改善の必要があったこと。
B高齢化社会への対応のため
65歳以上の人口は、2042年には36%になると予想され、一層の高齢化が進み、年金、医療、福祉などの財源がふくらみ、働き手の税負担も限界に達し、不公平感の高まり、勤労意欲の阻害が懸念されていたこと。
以上のようなことから、消費税法は、平成元年4月から実施され、当初3%から順次改正され、5%、8%と引上げられ、いよいよ10%(このうち2.2%は地方消費税)になるわけです。
2.基本的な仕組み
税は、転嫁の有無により、直接税と間接税に区分されますが、所得税のように直接自分で税金を納めるものを直接税といい、税金を負担する者と納める者が異なるものを間接税といいます。
消費税(地方消費税を含む)は、物品の製造者が納めた税を取引価額に上乗せして卸売業者へ転嫁し、さらに卸売業者は同様に小売業者へ転嫁し、さらに小売業者は消費者へ取引価額に転嫁して販売し、最終的に物品を購入する消費者が負担する仕組みとなっています。
間接税の代表的なもので、税収のウエイトも高い税となっています。
@間接税の種類
・消費税:一般消費税と個別消費税(酒税・たばこ税・石油ガス税など)があります。
・流通税:契約書等に貼付する印紙税があります。
A納税義務者(消費税法第5条)
国内取引については、事業者が納税します。輸入取引については、保税
地域(関税の徴収一時留保地域)から課税貨物を引き取る事業者や個人などが納税義務者です。
B引き上げ後の税率
消費税7.8%、地方消費税2.2%の合計10%となります。
C各段階での納付税額の計算例(消費税率10%の場合)
・A製造業者 Bへ 売上 10,000 消費税 1,000 納付税額a 1,000
・B卸売業者 Aより仕入 10,000 消費税 1,000負担
Cへ 売上 15,000 消費税 1,500預かり 納付税額b 500※
※課税売上消費税1,500-課税仕入消費税1,000=500
・C小売業者 Bより仕入 15,000 消費税 1,500負担
Dへ 売上 20,000 消費税 2,000預かり 納付税額c 500※
※課税売上消費税2,000-課税仕入消費税1,500=500
・D消費者 Cより購入 20,000 消費税d 2,000負担 購入価額22,000円
各段階の納付税額(a+b+c)合計は消費者が負担した消費税d 2,000円と一致します。
D総額表示の義務付け
消費者に対しては、事業者が値札等によって、商品、サービス等の価格を表示する場合、消費税相当額を含めた支払総額(税込価格)の表示を行うことが義務付けされています(第63条)。
ただし、2021年3月までは、特例により、表示価格が誤認防止措置を講じられていれば税込価格を表示しなくてもよいことになっています。
例えば、税込み価格11,000円の商品は、次のように表示できます。
A商品11,000円(税抜き価格10,000円)
A商品11,000円(内消費税1,000円)
A商品10,000円(税込価格11,000円)
A商品10,000円(税込価格11,000円)・・・この場合は文字が小さく誤認を与えるので不可
3.課税対象となるもの(第4条)
@国内取引
国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等(資産の譲
渡、資産の貸付および役務の提供など)および特定仕入れ(事業として他の
者から受けた電気通信利用役務の提供(注)など特定資産の譲渡等)が課税対象とされています(第2、4条)。
(注)電気通信役務の提供とは、資産の譲渡等のうち、電気通信回線(インターネット等 )を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供
です。例えば、電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ ソフトウエアの配信、データ
ベースの利用サービス・保存場所提供サービス、広告の配信・掲載、WEBサイト利用サービス、宿泊・飲食店予約サイトなどの役務の提供などがあります(基本通達5-8
-3)。
なお、電話、FAX,インターネット回線接続など「通信そのもの」に該当する役務の提供は除かれます。
A資産の譲渡等の該当例(基通5-2-1〜16)
・親族間の資産の譲渡・・・事業として対価を得て行われるものが該当。
・非居住者が行うもの・・・非居住者が行うものも事業として対価を得て行うものは該当。
・保証債務等履行のための資産の譲渡・・・保証債務の履行のための資産の譲渡や強制換価手続きによる換価譲渡。
・会報、機関紙の発行・・・団体、組合等が対価を得て行う会報等の発行。
・損害賠償金・・・特許権や商標権、著作権などの無体財産権の侵害を受けたことにより受け取る権利の使用料に相当するものが
該当。
・寄附金、祝金、見舞金等・・・資産の譲渡等のほかに寄附金等名目で金銭受領の場合、譲渡の対価を構成すべきものと認められるときは該当。
・役務の提供・・・請負契約に基づく工事、仲介、技術援助などのサービス提供をいい、弁護士、税理士、作家、スポーツ選手などの専門的知識、技能等に基づく役務の提供などが含まれます(基通5-5-1)。
4.非課税取引
(第6条、別表一、二、基通6-1-1〜6-13-9)
税の性格上、社会政策的観点から次のものは非課税とされています。
@土地の譲渡、貸付け(一時的使用を除く)
A有価証券等および支払手段等の譲渡
有価証券等には、船荷証券、ゴルフ会員権等は含まれません。支払手段と
は、銀行券、政府紙幣、硬貨、小切手、約束手形、為替手形、郵便為替など。
B利子、保証料および保険料等を対価とする役務の提供等
C郵便切手類、印紙および証紙の譲渡
D物品切手等の譲渡
物品切手は、商品券その他物品の給付請求権を表彰する証書(ビール券、旅行券、図書券、仕立券)などです。
E国等の行政手数料等
・国や地方公共団体等から委託または指定を受けた者が徴収する手数料等。
・登記、登録、特許、免許、許可、認可、承認、認定、確認及び指定、検査、検定、試験、審査および講習、公文書の交付手数料など。
F外国為替業務に係る役務の提供
G社会政策的なもの
社会保険医療等、介護保険サービス等、社会福祉事業等、お産費用等、埋
葬料・火葬料、身体障害者用物品の譲渡・貸付等、学校教育等費用、教科用
図書の譲渡、住宅の貸付け、外国貨物の一定のものが非課税です。
5.免税取引
輸出取引等として行われる課税資産の譲渡等や輸出物品販売場で行われる輸出物品の譲渡などです(第7条)。
6.納税義務の免除(第9条)
納税義務者は、個人事業者および法人ですが、小規模事業者に対しては免除の特例があります。概要は下記のとおりです。
@基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
基準期間は、個人は暦年の前々年、法人は事業年度の前々事業年度です。
ただし、この場合でも課税事業者を選択の場合は、納税義務者となります。
また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、課税期間に係る特定期間(前年または前年度の6か月間)における課税売上高が1,000万円を超えるときは、その課税期間は免除されません(第9条の2)。
A基準期間の課税売上高は、資産の譲渡等の対価の額(税抜き)です。
B免税事業者が、課税売上にかかる消費税を消費者から預かり、課税仕入れにかかる消費税を負担している場合、納付すべき消費税が生じますが、納税義務は免除されていますので、その差額が利益になるときがあります。益税といわれています。
7.軽減税率の導入、経過措置
消費税が10%に引き上げられる時期に併せて、次のものは、8%(地方消費税込み)の軽減税率が適用されます。
@飲食料品の譲渡および保税地域からの引取り
飲食料品の譲渡における、外食、ケータリングサービスは軽減対象外とされますが、有料老人ホームの食事提供や学校給食等は軽減対象です。
牛丼店やハンバーガー店でのテイクアウト、そば屋、ピザ屋の出前・宅配も軽減対象になりますが、店内での飲食は軽減対象外です。
A定期購読契約に基づく新聞の譲渡
一般社会的事実を掲載し週2回以上発行される宅配契約のものが対象で、駅売り等に限定の新聞は対象外とされます。
B経過措置(一部抜粋)
・旅客運賃、映画・演劇の入場料等不特定多数の者に対する譲渡等の対価で、2019年9月までに領収しているものは、課税資産の譲渡等を10月1日以後に行うときは8%(地方消費税込み)が適用されます。
・工事の請負等で、2019年3月末までに締結した工事請負契約に係る課税資産の譲渡を行う場合は、8%(地方消費税込み)が適用されます。
これらの措置は計画的に活用できると思われます。
(注)本稿は、消費税の理解のための概要解説であり、事業者が行う消費税額の計算や消費税の申告等専門家が行う事項については触れておりません。
(参考文献)
1.消費税法
2.国税庁ホームページ 消費税法改正のお知らせ
3.国税庁ホームページ 間接税法(平成29年版税大講本)