先月18日、本年度の全国の「基準地価」が発表されました。ご承知のとおり、各地域に選定された一定の基準地における7月1日現在の価格(u当たり単価)です。全体では、前年比で27年ぶりの上昇に転じていす。
主な理由としては、景気回復、外国人観光客の増加による店舗、ホテル需要の高まり、各地方都市(人気の高い札幌、仙台、広島、福岡)が三大都市圏を上回る上昇により、住宅地が連続下落(55%の地点で下落)のなか全体で上昇となっています。
基準地価と価格が同レベルのものとして「公示地価」がありますが、標準地となる地点が若干異なるものの、基準地同様不動産鑑定士により適正な評価が行われ、毎年1月1日現在の価格として3月上旬に発表されています。
両者を時系列で比較するとこの6カ月間の価格変動状況が把握でき、現在の「実勢価格」(取引価格)や担保価値算定の参考指標となります。
土地の価格は、立地や地域特性、形状や規模などの利用形態、法令の規制など総合的に判断して決定されますが、一方で、都市計画道路として拡幅、延長などが行われると一般的には利便性向上で土地の価格は上昇します。
また、2022年に生産緑地(注)の農地等が30年の指定期限到来により、宅地供給が増えると地価下落に作用すること(2022年問題と言われています)が考えられます。
しかし、実際の取引は、最終的に需要者と供給者間で合理的とされる価格にて行われます。
このほか、固定資産税の基礎となる価格は、土地は公示地価の7割程度の評価「固定資産税路線価」となっており、3年ごとに見直しが行われます。
前回は、平成27年でしたので、本年度が「基準年度」となり見直しが行われましたが、その土地の評価額は新松戸五番街では3.8%程度上昇しています。
その結果、固定資産税は、家屋の評価がわずかに低くなっていますが、土地の評価が高くなったため、納税額は少し高くなっています。
この価格が3年間据え置きとなりますが、次回の見直し時期2021年は東京オリンピックの後、消費税10%引き上げの後となり注目すべき年度になります。
(注)生産緑地について
生産緑地法に定めがあります。
生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的とする。
市街化区域内にある農地等で次の要件を備える区域について都市計画で定められます。該当の農地は「標識」の設置義務があります。
@公害または災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適していること。
A500u以上の規模の区域であること(条例により300uまで減少可)。
B用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていること。
生産緑地地区においては、次に掲げる行為は、市町村長の許可が必要になっています。
@建築物その他の工作物の新築、改築または増築。
A宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更。
B水面の埋め立てまたは干拓。
以上の許可を要する行為のうち、市町村長は、次に掲げる行為で良好な生活環境確保に支障ないと認められるものに限り許可することができる。
@農産物、林産物または水産物の生産または集荷の用に供する施設。
A農林漁業の生産資材の貯蔵または保管の用に供する施設。
B農産物等の処理または貯蔵に必用な共同利用施設。
C農林漁業に従事する者の休養施設。
〈改正による追加施設〉
昨年度の改正で許可施設が追加されています。
D農産物を主たる原料として製造または加工する施設。
E製造・加工されたものを販売する施設。
F生産緑地内で生産された農産物等を主たる材料とするレストラン。
生産緑地所有者は、次の場合に市町村長に対し、生産緑地を時価で買い取るべき旨を申し出ることができます。
@1992年11月5日の都市計画告示日から30年経過したとき。
A生産緑地の農林漁業の主たる従事者が死亡または従事を不可能にさせる故障を有するに至ったとき。
指定から30年経過する2022年までに、市町村長は、土地の利用状況を勘案し、良好な都市環境の形成を図るうえで特に有効と認められるものを、「特定生産緑地」として指定できる。この場合の指定期限は10年となり、その後も必要に応じさらに10年延長されます。
したがって、指定から30年を経過すると買取り申出が自由にできるようになります。
最近報道等でよく目にするようになりましたので、考察しておきたいと思います。
自治体による生産緑地買取り対応については、これまでその申出をした場合、予算規模において買取り困難で実績が少ないと言われています。
一方、土地所有者は、これまで農地として優遇税制を受けていたものが、宅地並み課税となりかなりの税負担が生じるため、売却か、アパート・マンション等の有効活用か、農産物の直売所・レストラン経営などを行うかなどの選択検討が必要になると思われます。
土地所有者によるアパート経営や定期借地権利用により、賃貸物件等がさらに増えると、一方で、人口減少や高齢化による需要減の影響で賃料相場の下落も想定されます。
生産緑地の多い地域は大量の売却が行われると公示地価や基準地価の下落も想定されます(固定資産税の負担は減少しますが)。
また、現行の低金利水準の動向も気になるところです。これらの諸問題に十分目配りし、不動産売買、ローン活用などに十分留意したいものです。