昨年12月に平成31年度税制改正の大綱が公表されました。この税制改正法案は、現在開会中の国会で審議され、3月末までには成立すると思われます。
ご承知のとおり、暮らしに影響するものとして、10月には消費税が確実に10%に引上げになる見込みです。
その引上げ分の税収は、教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材確保等と財政再建に概ね半分ずつ充当されることとされています。
また、低所得者に配慮した軽減税率制度や自動車と住宅に対する支援策などが講じられています。
個人に関する税制概要について確認しておきたいと思います。
1.住宅ローン控除の特例
本年10月から2020年末までの間に消費税が10%適用される住宅を取得した場合に限り、住宅借入金等特別控除額が13年間(現行10年)控除できるようになります。
控除額は、一般住宅の場合は住宅ローン年末残高の1%(上限40万円)ですが、消費税2%負担分を3年間で軽減する仕組みとなっています(算式省略)。
2.空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
現行では、被相続人の居住用財産を個人が相続により取得し、相続日から3年を経過する年の12月末までに譲渡した場合、譲渡益に対し次の要件のもとに3,000万円の特別控除の適用があります。
@被相続人の居住要件
相続開始直前まで一人住まいであった。
A譲渡家屋などの要件
家屋とその敷地を譲渡の場合は、昭和56年5月31日以前建築の一戸建て住宅で、相
続の時から譲渡の時まで空き家で耐震基準を満たすもの。または、家屋を取壊し更地で
渡する場合は、取壊すまで空き家であったものに限られます。
B譲渡価額要件は一億円以下です
《本年度の改正案》
適用期限が、本年4月から2023年12月末までの譲渡に延長され、居住要件も相続開始
直前に介護認定を受け老人ホームに入居していた場合や老人ホームに入居し空き家にし
て、被相続人が一定の使用をしていた場合に認められます。
3. NISA、ジュニアNISA等
少額投資非課税口座開設の年齢がNISAは18歳以上、ジュニアNISAは18歳未満に引下げられます。
これは、民法改正で2022年4月から成年年齢が18歳に引下げになることに伴うもので、2023年1月から適用されます。
4. 一括贈与の非課税措置等
@結婚・子育て資金の一括贈与
受贈者が20歳以上50歳未満の人でその直系尊属から結婚・子育て資金として贈与を受け信託した場合1,000万円まで非課税ですが、受贈者の前年の所得が1,000万円を超えるときは非課税の適用がなくなります。
A教育資金の一括贈与
受贈者が30歳未満でその直系尊属から教育資金として贈与を受け信託した場合1,500万円まで非課税ですが、受贈者の前年の所得が1,000万円を超えるときは非課税の適用がなくなります。
さらに、受贈者が23歳以上の場合、学校以外の者に支払う教育関連費、スポーツや文化・芸術の習得費用等が非課税対象(現行は500万円まで非課税)から除外されます。
(留意点)
現行では、契約終了までの間に贈与者が死亡した場合、死亡前3年以内の教育資金の一括贈与非課税分は、受贈者の相続税計算上課税対象外でしたが、改正後は、次の場合は贈与者死亡日現在の管理残額が相続税の課税対象になります。
@受贈者が23歳以上である
A学校に在学していない
B教育訓練給付金対象の教育訓練中ではない
なお、一括贈与の特例は、信託受益権に適用され、本年4月から2021年3月末まで延長されます。
5 配偶者居住権の評価
先の民法改正で、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について、終身又は一定期間無償で居住できる配偶者居住権が創設されましたので、これに伴い、相続税法上の評価方法が定められます。
民法の施行日は2020年4月1日ですが、相続税法の施行日は未定です。
@配偶者居住権の評価
建物は、固定資産税評価額に基づき残存耐用年数等により評価されます。敷地利用権は、路線価に基づき存続年数等により評価されます。
A所有者の所有権の評価
建物、敷地所有権は、その財産の評価額から居住権、敷地利用権をそれぞれ控除した価額とされます。
6.車体課税
@自動車税
自家用乗用車の自動車税が、現行の税額から次の区分に応じ軽減され、本年10月から適用されます。
排気量 |
軽減額 |
自動車税 |
〜1,000cc |
4,500円 |
25,000円 |
〜1,500cc |
4,000円 |
30,500円 |
〜2,500cc |
3,500円 |
36,000円 |
〜 2,500cc |
1,500円 |
40,500円 |
2,500cc超 |
1,000円 |
50,000円〜 |
A自動車取得税
軽減割合が変更され、本年4月〜9月末までの新車登録に適用されますが、10月の消費税増税後廃止されます。
B自動車税環境性納割
自動車取得税が廃止されると新たに導入され、車両・燃費区分に応じ課税されます。
☆2020年度燃費基準値クリア 乗用車:2%、軽自動車:1%
☆2020年度燃費基準値より10%向上 乗用車:1%、軽自動車非課税
☆2020年度燃費基準値より20%向上 非課税
環境性能割は、本年10月以後新車登録を受けたものから適用されますが、2020年9月末までに取得したものは1%軽減されます。
7 今年の申告の新たな留意点
平成30年分の所得税の確定申告では、配偶者控除・配偶者特別控除に留意が必要です。
本人の所得区分ごとに、配偶者の収入(所得)に応じた控除額になります。
仮に、本人の給与収入が1,120万円の場合、給与所得控除220万円を控除し所得金額は900万円以下の区分になり、配偶者のパート収入が103万円以下なら、所得は38万円ですから配偶者控除38万円(70歳以上なら48万円)の適用があります。
配偶者の収入が150万円になると、配偶者控除の適用はなくなり、配偶者特別控除として、控除額は38万円の適用となります。(詳細省略)
是非ご確認を!
<参考文献>
平成31年度税制改正の大綱(平成30年12月21日閣議決定)
