マンションの競売物件について

2020年4月28日

 不動産の特殊な売買方法として、競売という換価方式があります。通常、競売と書いてきょうばいと呼んでおりますが、裁判所が行うものはけいばいと呼びます。 これは通常の任意売却で行う不動産売買に対して、住宅ローンの破綻等により債権者が裁判所に申し立てて行われるものです。
  競売とは、売主が多数の人に買受けの申出を行わせ、最高価の人に売却する競り売りのことですが、事例としては、裁判所で債権者が行う担保権の実行、マンション管理費等の滞納額に対する先取特権の実行、共同生活の障害除去のための区分所有権等の競売請求、相続の限定承認における不動産の処分、遺産分割協議不成立の際の競売などがあります。
 新松戸地域においてもマンションの競売事例がいくつかありますので、後学のため「競売」に関する基礎知識を確認しておきたいと思います。
 競売物件情報は、すべて管轄の地方裁判所が公告しており、競売不動産を買いたい人はいつでも裁判所の閲覧コーナーやBIT(不動産競売物件情報サイト)で検索し物件を確認して入札に参加することができます。入札は、所定の方式により誰でも申込みでき、一定期間内で最も高い価格と認定された人に売却が決まります(落札)。時価に比べ安い価格で購入できそうです。
 ただし、通常の売買と異なるため、物件の現地調査において建物内部の確認が困難であること、物件引渡しがスムーズにいかない場合もあること、鍵の引渡しは裁判所が関与しないことなど注意すべき点があります。入札の際は、登記の全部事項証明書で確認し、現地実査を行い、裁判所の備え置き資料(3点セット)をよく読んで検討します。競売の専門家に依頼し、アドバイスを受けながら入札に参加することもできます。

1.債権者が担保権を実行する場合の競売の流れ

 借入金により取得した不動産を持つ債務者が長期にわたり返済を滞らせ一定期間遅延すると、債権者が債権回収のため担保として設定していた抵当権を実行します。この場合、手続きの流れは次のようになります

@ 債権者が裁判所に競売申立てをします。裁判所は債権者のために強制競売開始の決定をし、差し押さえる旨宣言しこれを債務者に送達します。
A書記官が、直ちに管轄登記所へ「差押」登記を嘱託し競売手続きが行われます。差押え登記は、登記事項証明書の甲区欄で確認できます。
 なお、登記事項証明書は、法務局で誰でも交付請求することができます(1  通600円。オンライン請求・郵送受領は500円)。
B裁判所の調査命令に基づき、執行官が、不動産の形状、占有関係その他の 現況を調査のうえ「現況調査報告書」を作成し、裁判所に提出します。
C裁判所の評価命令に基づき、不動産鑑定士が、不動産の売却基準価額を決定する資料として「評価書」を作成し、裁判所に提出します。
D裁判所は、評価書に基づき売却基準価額を決めます。
E書記官は、調査状況、利害関係人等の審尋等の結果を総合的に判断し権利状態等を記載した「物件明細書」を作成します。
 裁判所は、これらの3点セット(「現況調査報告書」「評価書」「物件明細書」)の写しを一般の閲覧に供するか、インターネットで検索できるようにし、所定の措置を行ったあと売却手続きを開始します。

2.「3点セット」の概要(マンションの例)

@現況調査報告書(執行官)

 物件の明細、建物内外の状況、図面、占有者の状況、管理費等の額などのほか、関係人の陳述等が記載されています。関係人は、所有者(債務者)、債務整理の受任弁護士、申立て債権者の担当者、賃貸管理会社、占有者などです。さらに、執行官が調査の経過を時系列で記載し、関係人からの陳述に基づく意見を記載していて、物件の状況がわかるようになっています。

A評価書(不動産鑑定士)

 鑑定士による評価が行われます。評価額は、取引市場における価格ではなく、競売不動産特有の制約などの特殊性を反映させた価格とされていて、調査時点の現状価格で目視可能な部分に限定されています。
 具体的には、近隣、同類の区分所有建物の取引事例等から比準価格を査定し、賃貸した場合の収益還元法による収益価格を求め、これらを物件の状況に応じて考慮し、調整後の価格が求められています。
 この価格から、市場性修正を行い、競売市場修正(内覧できない、引渡しまで法定手続きが必要、契約不適合の責任がないなどの制約)、滞納管理費等や買受人が承継する敷金等の減価要因などの市場性修正を行って算定されます。  減価率40%から50%を控除後の評価額が売却基準価額となっています。

B物件明細書(書記官)

 書記官が、現況調査報告書と評価書に基づき作成した物件概要です。

3.入札の公告、売却方法

 売却方法は、裁判所書記官の定める売却の方法(期間入札)により、不動産の表示、売却基準価額、日時および場所を公告し、執行官に実施させます。
 「期間入札の公告」の項目は、@入札期間、A開札期日、B売却決定期日、C買受申出保証金の提供方法、D買受申出の資格の制限、E3点セットの閲覧室備え置き期間、F買受申出保証額(通常は売却基準価額の2割)、G固定資産・都市計画税、H物件目録などです。 


4.競売物件を購入検討する場合

 入札期間内に買受けの申出をします。この時、買受申出保証金を納付します。その後、開札期日に最高価買受申出人が決まり、売却決定期日に許可諾否が決定され、確定すると期限までに残代金(買受申出額から納付した買受申出保証金を控除した額)の納付通知書が送られてきます。 

 その買受可能金額と所有権移転登記のための登録免許税を納付すれば、抵当権の抹消、所有権移転登記が裁判所から法務局に嘱託登記され、2週間程度で、「登記識別情報通知」(従前の登記済証)と「登記完了証」が買受人に送付されます。

<登記識別情報>

 12桁の英数字が印字されシールが貼ってあるので、そのまま大事に保管しておきます。今後の売買等による所有権移転登記の際必要になります。

5.競売価額と時価との比較

 競売基準価額は、不動産鑑定士の評価によれば、6割程度の価額となっていますので、投資または住替えとして検討する場合、仮に時価1,000万円程度のマンションの場合は、競売の基価価額は時価の6割程度から入札が開始されますので3割程度高く入札して800万円程度で落札できれば安い買い物になりそうです。また、そのマンションの建物の維持管理状況が良く、修繕積立金も1戸当たり200万円程度ある管理良好な物件ならさらに有利になります。
 競売物件は、投資や住替えにも研究の余地がありそうです。 

 ぜひご研究ください!
   

<参考文献>

1.BIT(不動産競売物件情報サイト)
2.民事執行法、民事執行法財務省ホームページ