自筆証書遺言書の保管制度

     2020年8月22日

 本年7月から、自筆証書遺言書は、法務局(遺言書保管所)で保管してもらえるようになりました。これまでは、保管場所や保管してもらう
人をあれこれ苦労されている人がいましたが、本制度を利用すればこれが解決されます。
 なお、公正証書で遺言書を作成される場合は、これまでどおり原本は公証役場で保管され、正本・謄本を個人が保管することになります。
 遺言書の作成を自筆証書にするか公正証書にするかは遺言者本人の事情に応じて選択することになりますが、ルール通り作成されてい
れば、いずれによっても一長一短はありますが、効力に変わりはありません(民法第967条〜975条参照)。

1.自筆証書遺言書の保管までの流れ

 @自筆の遺言書を作成する(自筆証書の遺言書記載事例参照)
 

                 遺 言 書  (全文自書) 

  私は次の通り遺言する。


 第1条 別紙財産目録のうち、別紙2の預貯金等財産を除く全部の財産(別紙1,3,4記載財産)を妻五番花子
  (昭和20年1月2日生)に相続させる。

 第2条 別紙2の預貯金等は遺言執行者において換金後、金500万円を長男五番一男(昭和46年2月3日生)
  に、金400万円を長女松戸次子(昭和50年3月4日生)に相続させる。

 第3条 前条の預貯金等換金額の残余金のうち、金100万円を母校学生支援のため、公益財団法人松戸奨学金
  (事務所:松戸市〇〇町)に遺贈(寄付)し、残余金はすべて前記妻五番花子に相続させる。

 第4条 次の債務、葬儀費用は、妻五番花子の負担とする。
  @ 未払公租公課、未払医療費その他の債務
  A 葬儀費用一切

 第5条 本遺言の執行者として、前記の長男五番一男を指定する。

 「付言事項」
  本遺言は、妻の老後生活に支障なきよう配慮したもので、長男・長女は遺留分侵害額を生じることが
  あっても母のため了承して欲しい。

  令和2年8月8日

     遺言者 五番 太郎 (印) (昭和18年1月1日生)


  (用語注解1) 財産目録について
    A4サイズ用紙使用。余白を設ける(上部余白5mm以上、下部余白10mm以上、左余白20mm以上、右余白5mm以上)。

    番号を付した財産目録「別紙1」不動産登記事項証明書、「別紙2」預貯金通帳(銀行・支店名、名義、口座番号が分かるもの)コピー、
   「別紙3」その他財産明細表(財産名称、名義、記番号など)の目録はページを自書し、 下部余白に署名・押印する。 (五番 太郎 印)

  (用語注解2) 遺言執行者について
    未成年者、破産者を除き、専門家や友人、親族などを指定でき(民1009)、権限は遺言内容を実現する権利義務を有し(民1012)、その
   行為は相続人に対し効力を生ずる(民1015)。


 A保管場所を決める
  遺言者の本籍地、住所地、所有不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務大臣指定の法務局、支局、出張所)から選択します。

 B遺言書の保管申請書を作成する
  「遺言書の保管申請書」は法務局窓口でもらうか、法務省HPからダウンロードできます。(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html)

   主な記載項目は次のとおりです。
  ・遺言書作成年月日 ・氏名、生年月日、住所 ・本籍、戸籍筆頭者氏名 ・受遺者、遺言執行者 ・死亡時の通知対象者など。

 C申請日時を予約し、遺言書原本(無封)、所定の書類を持参し、本人が法務局へ出頭し、遺言書保管官に保管申請する
  法務局(遺言保管場所)へ訪問または電話予約する。予約は法務局手続案内予約サービス専用HPでできます。

 D保管証を受理し、遺言執行者または家族に伝達または保管してもらう
  保管申請手続き終了後、「保管証」が交付されますので、大切に保管してもらいます。

2.保管後にできること

 @遺言書の閲覧請求ができます(遺言書保管所に自ら出頭し、原本閲覧または最寄り法務局でモニターによる閲覧ができる)。
 A遺言書書き換えや撤回の場合は、所定の撤回書を提出し返還してもらうことになります。

3.遺言者死亡後の手続き

 @相続人等(第三者である遺言執行者を含む)は、遺言内容確認のため遺言書の閲覧請求ができる。
 A相続人等は、遺言内容確認のため「遺言書保管事実証明書」を交付請求することができる。
 B登記や各種手続きは、「遺言書情報証明書」を交付してもらいこれを使用して手続きが可能になります。

4.利用メリット・デメリット

 @メリット
  これまで、自筆証書の遺言書は、自宅に保管するケースが多く、いざ相続開始となったときに、相続人がその有無を調査することが大変で、
  また発見した場合、速やかに家庭裁判所の検認手続き(費用5万円)を受けないと相続手続きができない(民1004,1005)など不便でしたが、
  これが解消され安全に保管されます。

 Aデメリット
  法務局に保管の場合、申請手数料1通につき3,900円ですが、書き換えの場合は、申請の撤回となり、書き換え後は、再度、遺言書の保管申請
  が必要になります。また、申請には、本人確認書類が必要です。  

  <手数料一覧>                                               
申請・請求項目 申請・請求者 手数料   
保管の申請 遺言者 1通 3,900円 
閲覧請求(モニター) 遺言者・相続人等 1回 1,400円 
閲覧請求(原本) 遺言者・相続人等 1回 1,700円 
遺言書情報証明書交付 関係相続人等 1回 1,400円 
遺言書保管事実証明書交付 関係相続人等 1通  800円 

5.事前準備書類

 @遺言者の生まれた時からの除籍・戸籍謄本(記載事項証明書)、改製原戸籍謄本(昭和32年と平成6年の改製分あり)・・・相続人の確認書類
 A不動産の登記事項証明書・・・遺言書添付書類
 B預貯金通帳コピー・・・遺言書添付書類
 Cエンディングノート(重要書類、重要鍵、パソコンID・PW、クレジット・キャッシュカード明細・PWなどのメモ)・・・遺言書「保管証」と一緒に保管

 

<参考文献>
1. 法務省民事局 「自筆証書遺言書保管制度のご案内」 リーフレット
2.法務局における遺言書の保管等に関する法律